時計じかけのオレンジ(完全版)
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時計じかけのオレンジ 完全版 (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1)
アントニイ・バージェス (著), 乾 信一郎 (翻訳) 。キューブリックの映画版が有名すぎて名作すぎるので全国民がみていると思われる。原作では映画で描かれなかった最終章があり、主人公のアレックスが「結婚でもして子供を作ろう、家庭を作ろう」と考えて終わる。
「おれは若くはない、もう若くはない、全然。アレックスはどうやらオトナになったんだ、ああそうだよ。」
映画版に慣れ親しんでいるとちょっと驚くようなラストではある。
アメリカでは当初、最終章が削除された版が出版されていたため、映画の脚本のほとんど書き上げるまで、キューブリックは最終章を読んでいなかったという。最終章は「付け足しの章」で、納得のいかないものだった、とキューブリックは言う。「出版社がバージェスを説き伏せて、彼の正しい判断に反して付け足しの章を加えさせたと知っても驚かなかった。」
事実はそうでないが、86年の完全版発行までの長い間、米国版について最終章の復活を求めなかったところをみると、作者のバージェス自身も迷っていたんじゃないか、と解説の柳下毅一郎は書く。
アレックスの物語はチンピラ暴力巡業にはじまり、仲間の裏切り→投獄→受刑→死→復活、と、キリストをなぞっている。不良少年のキリスト、超暴力の救世主。そこまでの物語を描ききるのがみんな大好き、やたらスタイリッシュで魅力的な映画版で、最後に降りてしまうのが原作最終章だ。
カトリックの作家であるバージェスにとって、「主人公か主要登場人物の道徳的変容、あるいは叡智が増す可能性を示せないならば、小説を書く意味などない」という。「すべて元通り」のままでは、寓話にしかならないのだ、と。
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